閑古鳥は飛び立った

sweetblues

2010年07月29日 23:28

スーパーは混雑している。
特売品が不足しているからだ。
わずかな特売品を我先に争う客でコーナーは騒然としている。

小心者の店長代理は3軒先の八百屋へこっそり駆けつける。
これぜんぶ買うから8掛けにしてよ。
すっかり足元を見ている八百屋は、にやっと笑って1割り増しを譲らない。

特売品はまだか。
特売品がないなら、これも負けろよ。
ああ、これもだ、これもだ。

小心者の店長が八百屋から買った大損の特売品を抱えつつ
あたふたとコーナーへ向かう。
混雑はさらに度合いを増し押し寄せる客はひきもきらず
客は溢れ溢れかえり、店の外へとさらに溢れ。

はて?
これは何のメタファーだ。
暗がりの中で出番をうかがう審判長は、笛の具合が気にかかる。
比喩には教訓がよく似合う。

特売品は八百屋がちゃっかり買い戻し
小心者の店長代理は、あたふたとまた八百屋へ走る。
客は溢れ溢れかえり、特売品はまた底をつく。

人生には教訓などいらないのだ。
目の前のリアルそのものが、メタファー。

客は客を演じ、店長代理は店長代理を演じる。
僕は僕を演じ、君を気にかける振りをする。
君は何を演じるのか。
君はまた八百屋へ特売品を売りに走るのか。

投げ出された混沌はひきもきらず
引き際の悪い僕は
店長代理の役目を引き受ける。

この教訓は何だ。
これはただの暗喩だ。
たとえだから、安心して演じられるのだ。

少しずつ少しずつ、僕の中から損なわれているものから
目をそらしつつ、暗喩だ暗喩だ、演じろと
したり顔で嘯く。




by shu








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