【映画】「斜陽」-時代設定の意図は?-

2010年07月18日

太宰治の「斜陽」。
サトエリ主演の映画版DVDを見る。
66分という短さはなんなのかと思いつつ見る。

戦後の没落貴族の虚無感、自己否定と革命への渇望。
そういった諸々のテーマは、戦後のこの時代なしには描けない。
なのに、なのに、時代設定は現代なのだ。
ここにこの監督の意図と失敗があるように思う。

昭和の初期のように見せつつ、さりげなく画面の端々に現代の設定をチラ見させる手法は、小憎らしい確信犯だ。
時代がかった旅館の一室のように見せつつ片隅にテレビとか、
家並みの遠景のベランダに衛星放送のパラボラアンテナとか。
まるで、水戸黄門の背景にちらっと映った電柱や、地面にクルマの轍みたいな見せ方をしておいて、携帯電話のあたりで、やっとああ、確実に現代なんだと落とす。

そんな実験的手法が、ただただ映画的には失敗してると思うけど。

どうにもカズ子や母、直治、上原の心情が迫ってこない。
「革命」なんてことばが、宙に浮いてしまってる。

ただ、サトエリはいいなあ、ってのが見るべきとこ。
カズ子役はわざとらしくてつまらないとはおもうけど、
なんだか雰囲気がよい。

ってことで、ひとことでいうと、なんじゃこりゃ的実験映画。
だからこそ、見てみてください。
太宰のニオイはみじんもないけど、ひかれる部分もなくはない不思議さもあります。

by shu


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Posted by sweetblues at 10:00│Comments(0)本・映画・音楽
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