ノルウェイの森 Norwegian Wood

2010年12月12日

村上春樹著「ノルウェイの森」。
当時、熱狂的なハルキストだった僕は、発売と同時にこの本を買った。
え、こんなの村上春樹じゃない、などと言いつつも、以後繰り返し読んだ。
じつは、うちの奥さんにはじめて貸した本が「ノルウェイの森」だったりする。
当時はまだつきあってさえいなかったけれど。

村上春樹の作品は、とても寓話的だ。
セリフも、現実感に乏しい。
どことなく、ツクリモノ感に満ちている。

それは、村上春樹が意図したことで、ただ、「ノルウェイの森」では、そのハルキらしさが、非常に薄い。

原作ものの映画は、ほとんどの場合、熱心な原作ファンをがっかりさせる。
それは当たり前の話。
文字で表現された作品は、読者の数だけビジュアルイメージがあり、世界観があり、空気感がある。
「ノルウェイの森」もがっかりした、残念という声がとても多い。

もちろん、僕が持っている「ノルウェイの森」の世界は、映画「ノルウェイの森」とは全然違う。
でも、引き込まれた。
映像の美しさもさることながら、1960年代の日本という設定でありながら、無国籍的な世界観を醸し出しているのは、トラン・アン・ユン監督のなせる技だろう。

「僕は今どこにいるのだ?」
「ノルウェイの森」をかたちづくる喪失感、不在感。
痛いほどに迫ってくる。
それぞれが抱えている喪失感をなんとか取り繕おうとして、ますます深まる混迷。

原作にはあっても映画にはないものがあり、映画にはあっても原作にはないものがある。
原作をただビジュアル化するだけなら、映画をつくる意味は無い。

緑はとても魅力的だ。
原作の緑とも違う。この映画のキーパーソンとも言ってよいと思う。
いや、ただたんに僕が緑みたいな女の子にひかれてしまうだけかもしれない。

この映画の最大の欠点は、直子とレイコさんの関係性が十分に描かれていないこと。
だから最後にレイコさんがワタナベを訪ね、寝てしまうことの意味が伝わらない。
致命的と言えば致命的な欠落。

そして、原作にある重さと軽さ。
映画では、軽さの部分が欠落している、あるいは、省かれている。

原作に思い入れがなかったり、読んでなかったりしたら、あんまりよくわからない映画なんだろうか。
そこらへんは、知りたい。

by shu


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Posted by sweetblues at 12:05│Comments(0)本・映画・音楽
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